膀胱とは

膀胱は尿を貯留するための伸縮性のある袋状の臓器です。成人では300-500mlの尿をためることができるとされています。

膀胱炎

概要

尿路感染症のうち膀胱に生じた細菌感染症のことをいいます。経過の違いにより急性と慢性、基礎疾患の有無により単純性と複雑性に分類されます。その他、ウイルス性や薬剤性、アレルギー性、放射線性など膀胱炎の原因は多岐にわたります。

症状

急性単純性膀胱炎は排尿時痛や頻尿、血尿、残尿感、下腹部痛などが見られます。慢性複雑性膀胱炎は症状がない、もしくは軽微である場合がありますが、急性増悪し急性膀胱炎と同様の臨床像をとることもあります。

検査・診断方法

尿検査 尿培養など

治療法

抗菌薬加療

間質性膀胱炎/
膀胱痛症候群

概要

間質性膀胱炎/膀胱痛症候群は、膀胱に関連する慢性の骨盤部痛や圧迫感、不快感があり、下部尿路症状を伴います。膀胱内にびらん性の病変(ハンナ病変)がみられるものを、ハンナ型間質性膀胱炎、それ以外を膀胱痛症候群といいます。また、ハンナ型間質性膀胱炎のうち重症(膀胱痛が強く、最大1回排尿量が100ml以下)のものは指定難病となっています。

症状

骨盤部の痛み、圧迫感、不快感。下腹部痛。頻尿など

検査・診断方法

尿検査や尿培養、膀胱鏡検査

治療法

生活習慣改善、アミトリプチリンの投与、ジメチルスルホキシドの膀胱内注入、膀胱水圧拡張術、ハンナ病変焼灼術など

過活動膀胱

概要

過活動膀胱とは、突然尿意があらわれる尿意切迫感を主症状とし、頻尿やトイレまで間に合わず漏れてしまうなどといった切迫性尿失禁を伴う疾患です。日本では40歳以上の男女の12-14%に過活動膀胱の症状を認めるとされ、高齢になるほど有病率が高く、また女性や肥満、うつ症状などを持つ方に多いとされます。尿をためている蓄尿時に膀胱の不随意収縮(排尿筋過活動)が原因とされています。また小児においても認められることがあり適切な診断と治療が必要になります。さらに神経因性の過活動膀胱は、脳血管障害やパーキンソン病などの疾患による脳の排尿調節機能障害が原因のこともあります。

症状

蓄尿時の急な強い尿意(尿意切迫感)、頻尿、尿漏れ(切迫性尿失禁)など

検査・診断方法

尿検査 残尿検査 問診票 など

治療法

行動療法、薬物療法 など

また過活動膀胱と診断し内服加療後12週間以上治療を続けても改善が見られない難治性過活動膀胱に対し、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法が2020年4月より保険適応となっており、当院では軟性膀胱鏡を用いて行っております。

神経因性膀胱

概要

排尿に関与する、脳・脊髄・末梢神経の障害によって、畜尿機能および排尿機能に異常が生じた状態の膀胱です。神経因性膀胱は神経が障害された部位によってさまざまな病態をとります。原因疾患としては、脳血管障害、脳腫瘍、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄損傷、二分脊椎、糖尿病などがあります。また骨盤内臓器の手術後にも排尿筋低活動などが起こる場合があります。

症状

尿意切迫感や失禁、尿閉など様々です。

検査・診断方法

原因疾患の同定、残尿検査、膀胱内圧測定など

治療法

薬物療法、手術療法、膀胱カテーテル療法(間欠的自己導尿、留置カテーテル)

尿失禁

尿失禁とは不随意な尿の漏出のことです。成人女性の約25%が尿失禁を経験するといわれています。種類も大きく分けて、腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁・溢流性尿失禁・反射性尿失禁とあり、それぞれが混合する場合もあります。

概要と症状

  • 腹圧性尿失禁とは、骨盤底筋群の緩みや尿道のしまりが悪くなり、咳やくしゃみ、重い荷物をもったときなど腹圧がかかった時に漏れてしまいます。妊娠や出産、肥満や加齢などが原因とされます。
  • 切迫性尿失禁とは、突然強い尿意がありトイレまで間に合わず漏れるといった症状のことで、原因としては過活動膀胱や、神経因性膀胱、細菌性膀胱炎などでよく認められます。
  • 溢流性尿失禁とは、慢性的な排尿障害があることにより、膀胱の中に尿が溜まっている状態が続き、膀胱の畜尿量を超えて尿道から溢(あふ)れて漏れてしまう失禁のことをいいます。原因として神経因性膀胱や前立腺肥大症、低活動膀胱などがあります。
  • 反射性尿失禁とは、尿意がないのに、排尿筋の不随意な収縮により勝手に尿が漏れてしまうこと失禁のことです。原因として神経因性膀胱があり橋から仙髄より上位の神経が障害されたときに起こります。

検査・診断方法

問診、尿流動態検査 など

治療法

保存療法、薬物療法、手術療法、カテーテル療法など

膀胱癌

概要

膀胱癌とは膀胱に生じる悪性腫瘍です。腫瘍の見た目は乳頭状や結節状が多く、出血することが良くあります。そのため、初発症状として血尿が出る頻度が高いと言われています。高齢男性に多いとされますが、喫煙や膀胱内の慢性炎症、芳香族アミンなど職業性発癌物質への曝露が発祥の危険因子となります。また膀胱癌は尿路上皮癌であるため、尿路である尿管や腎盂というところにも生じる可能性があります。血尿以外の症状がない、無症候性肉眼的血尿、が膀胱癌の特徴のひとつです。そのため、無症候性肉眼的血尿を認めた場合、一度は膀胱鏡を施行することをお勧めします。癌が進行すると、排尿時痛や血尿による排尿困難、体重減少や転移することもあります。

症状

血尿(無症候性が多い) 膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感)

検査・診断方法

尿検査 尿細胞診検査 膀胱鏡検査

治療法

  • 手術療法
  • 再発予防はBCG膀胱内注入療法など

尿膜管遺残・臍炎

概要

尿膜管遺残とは、膀胱と臍をつなぐ、胎児期に胎児の尿を母体に流すための尿膜管が、本来なら出生や成長とともに閉鎖および索状化するものが残ってしまっている状態のことをいいます。また臍(へそ)に細菌が入り、膿が出たり、臍の周囲の痛みがあったりする病気を臍炎といいます。尿膜管遺残があると、臍炎を繰り返したり、尿膜管癌の発生母地となることがあります。

症状

臍が赤くはれる 臍が痛い 臍から膿が出る 臍下にしこりが触れる 血尿 など

検査・診断方法

採血・尿検査・超音波・CT・MRIなど画像検査

治療法

臍炎に対して抗生剤加療や小切開による排膿処置が必要となります。
繰り返す場合は尿膜管摘除術などの手術が検討されます。

膀胱尿管逆流

概要

膀胱の緊満時あるいは排尿時に膀胱内の尿が尿管や腎盂に逆流する現象です。膀胱尿管逆流があると尿道から侵入した細菌が容易に腎盂へと波及し、腎盂腎炎を発症しやすいとされます。原発性と続発性のものがあり、原発性のものは小児に多く軽症例では自然消失することが多いとされます。

症状

発熱、腰背部痛、腹痛、頻尿、排尿時痛、残尿感、尿失禁など
繰り返す腎盂腎炎

検査・診断方法

採血、尿検査、尿培養、超音波、排泄時膀胱尿道造影、腎静態シンチグラフィなど

治療法

軽症の場合は抗生剤加療の保存療法を行います。
繰り返す尿路感染症、腎臓瘢痕化、腎機能低下などをきたす重症例は手術の適応となります。