精巣腫瘍

概要

精巣に生じる腫瘍で若年男性に生じる胚細胞腫瘍と50歳以上に多くみられる悪性リンパ腫が多くを占めるとされます。胚細胞腫瘍が疑われる場合には生検は行わず、できるだけ早く高位精巣摘除術で精巣を摘出し、病理組織学的な診断をつけることが大事です。

症状

症状は痛みのない陰嚢腫大を認めます。

検査・診断方法

血液検査で腫瘍マーカーの上昇および超音波検査で陰嚢内に低エコーの腫瘍を確認します。

治療法

なるべく早期に手術:高位精巣摘除術を行い、治療・診断をつけることが大事です。
また病理学的および病期に応じて化学療法を行います。

精巣上体炎

概要

精巣上体炎は陰嚢の中の精巣上体に生じた感染症で、尿路から精管を通じて逆行性に感染したものによることが多いです。若者ではクラミジアによる性感染症として起こりやすく、中高年層では大腸菌などの一般細菌が原因になることが多いとされます。また治療後も精管通過障害が残ることがあり、両側に起こると不妊の原因となったりします。

症状

発熱や陰嚢の痛み腫れがあります。

検査・診断方法

触診 採血 尿検査 超音波検査 など

治療法

抗菌薬加療

精巣炎

概要

精巣に生じた炎症のことで、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の原因であるムンプスウイルスに起因する精巣炎が一般的です。ただし、細菌性精巣上体炎からの二次的な炎症が精巣に波及することもあります。

症状

陰嚢の痛みや腫れがあります。両側性の場合は男性不妊の原因になることがあります。

検査・診断方法

ムンプスの病歴や、触診・採血・尿検査・超音波検査など

治療法

対症療法が主体で、局所の冷却などですが、精巣上体炎に波及するものは抗菌薬加療が必要です。

精巣捻転症

概要

精巣が精索を軸に回転し、急激な陰嚢部痛や腫脹をきたす病態です。思春期に好発し、精巣が機能障害や壊死に至ることから緊急的な処置(手術)が必要です。壊死した場合や、術後も血流が再開しない場合は精巣を摘出することとなります。

症状

突発的に起こる片側性の陰嚢部痛で、陰嚢が腫大し、下腹部へ放散する痛みや、吐き気などを生じることもあります。夜間に突然起こることが多く、過去に同様の症状が生じて、自然に整復され軽快した既往を持つ方に多いともいわれます。

検査・診断方法

触診 超音波検査 など
捻転が完全に否定されない場合は緊急手術を勧めます

治療法

緊急手術(整復+固定術)

精索静脈瘤

概要

精索静脈瘤とは陰嚢内のつる状静脈叢がうっ滞、拡張して静脈瘤を形成した状態のことです。原因としては、精巣静脈が様々な要因でうっ滞し、血管の圧迫、灌流抵抗が増大することで生じるとされています。大部分が左側に生じ、精索静脈瘤は男性不妊の原因の一つとされています。

症状

多くは無症状ですが、長時間の立位やおなかに力を入れたときに足の付け根から陰嚢にかけての不快感、痛みや腫瘤を自覚することがあります。

検査・診断方法

視診 陰嚢超音波など

治療法

手術療法 対症療法など

陰嚢水腫

概要

陰嚢内の精巣鞘膜によりつくられる鞘膜腔に漿液が貯留した状態のことをいいます。

症状

痛みのない、透光性の陰嚢腫大を認めます。

検査・診断方法

視診・触診・陰嚢超音波などで診断します

治療法

小児では交通性の陰嚢水腫がほとんどで自然吸収を待って経過観察をしますが、症状がある場合には開存する鞘状突起の結節や切断を行う手術を行います。また、成人の場合は非交通性の陰嚢水腫が多く、針を穿刺し内容物を適宜除去しますが、頻回に貯留する場合は、過剰な精巣鞘膜を切除する手術を行います。

精巣破裂

概要

精巣の白膜が破れ、精巣が破裂した状態です。主にスポーツ中の事故や交通事故、陰部を蹴れらたなどの強い外力が陰嚢に加わった際に起きます。

症状

陰嚢の疼痛、腫瘍、下腹部痛、嘔吐、皮下出血

検査・診断方法

超音波検査

治療法

精巣挫傷(白膜の断裂を伴わない)の場合は保存的に経過を見ます。
精巣破裂(薄膜の断裂を伴う)場合や著しい血腫形成を認める場合には、白膜縫合や精巣摘除などの手術が必要になります。

陰茎折症

概要

陰茎折症は、陰茎海綿体白膜が勃起時に鈍的外力により断裂することで発症します。原因として、激しい性行為や自慰行為、睡眠時勃起中の寝返り、勃起時の転倒などがあげられます。白膜断裂時にボキッと異常な音が生じ、その後に局所の痛みと皮下の出血が起こります。

症状

疼痛、陰茎の腫脹・変形、変色、血尿など

検査・診断方法

発症の契機の問診、視診、超音波、MRIなど

治療法

陰茎折症が疑われた場合は速やかに緊急手術の適応となります。
保存的加療では、のちに勃起時の陰茎痛や硬結、陰茎変形、勃起障害が起こる可能性が高いです。