陰嚢が腫れている
陰嚢の腫れはその他の症状の有無によって診断が異なります。
精巣腫瘍
精巣腫瘍は、発症のピークが20歳代後半から30歳代と、若年者に多いことが大きな特徴です。リスク因子として、精巣(睾丸)が乳幼児期に陰嚢におさまっていない停留精巣の既往がいわれており、発症リスクが通常の10~15倍と高まります。
精巣腫瘍は、陰嚢の大きさ、硬さ、左右差の変化などから見つかることがほとんどで、その内、痛みを伴わないものが多く、精巣が腫れてくることで発見されます。
陰部であり羞恥心やどこに受診すればよいか分からないなどを理由に 進行した状態ではじめて来院されるケースもまれではありませんので、何か気になることがございましたらご受診をお勧めします。また、精巣腫瘍は早期に発見し、早期に治療することが重要な病気ですので、早めに受診されることをお勧めします。
陰嚢水腫
陰嚢水腫は精巣の周囲に液体がたまって陰嚢がふくらんだ病態の事です。陰嚢の片側が大きくなり、左右差が出現します。両側ともに大きくなることもあります。痛みなどは特にありませんが、水腫が大きくなると、歩行時の違和感や圧迫感、皮膚が擦れて痛みなどを感じることがあります。
触診やエコー検査を使用し液体の貯留などがないか精査していきます。
その他陰嚢が腫れる可能性のある疾患
陰嚢が痛い
その他の随伴する症状によって診断が異なります。
精巣炎・精巣上体炎
精巣や精巣上体に細菌が繁殖し、炎症することで起こります。炎症が起きると陰嚢の疼痛、腫脹、発熱をきたします。一般的には片側の事が多く、原因菌としては、大腸菌のほかに、クラミジアや淋菌などが原因となります。尿道から細菌が入り込むのが原因といわれており抗生剤の治療が必要となります。
炎症は精巣上体に限局しますが、ひどい場合には精巣にも波及します。不妊症の原因にもなりますのでしっかりと治療を行う必要があります。
触診や発熱の状況などの問診、尿検査や採血検査、エコー検査で精査していきます。膀胱炎など尿路感染が起きた後に、細菌が精巣上体に感染する事が多いため、排尿状況の精査なども重要となります。
精巣捻転症
精巣が精索を軸に回転した状態のことで、急激な陰嚢の痛みや腫れを来します。思春期に好発すると言われており、血行障害にて精巣が機能障害や壊死に至るため緊急な処置が必要となります。そのような症状が気になる方は早めの受診をお勧めします。
その他陰嚢の痛みを伴う疾患
尿が赤い
(肉眼的血尿)
血尿以外の随伴する症状によって診断が異なります。
血尿の原因はさまざまであり、尿路組織の損傷や感染、腎臓の炎症、悪性腫瘍などがあります。血尿が続くことで貧血になる場合や、悪性腫瘍の場合は進行する可能性があります。また、健康診断で尿潜血が指摘された方や、見た目に尿が赤いなど症状があった方はなるべく早めの受診をお勧め致します。
血尿を来す疾患の例
健康診断で
泌尿器科の受診を
勧められた
健康診断表をご持参ください。泌尿器科疾患の項目としては、腎機能が低下している、尿に血が混じっている、超音波にて尿路系腫瘍や結石などの影がある、前立腺癌の腫瘍マーカーPSAが高い、など様々です。症状がなくても状態や再検査の結果により、適切な病院への御紹介を致しますので、まずはお気軽にご相談ください。
精液が赤くなった(血精液症)
血精液症
精液に血が混ざることを血精液症といいます。射精した際に気づくことになりますので、性病ではないかと心配になる方もいるかと思います。精液は精子と精嚢(せいのう)および前立腺の分泌液からなり、その大部分は、精嚢と前立腺の分泌物が占めていますので、出血部位としては多くの場合精嚢または前立腺になります。検査をしても原因がはっきりしない特発性とされるものが多く、まれに前立腺癌などの悪性腫瘍が存在することがありますので、まずはお気軽にご相談頂ければと思います。
尿が近い(頻尿)
頻尿とは尿が近い、尿の回数が多いという症状のことですが、一般的には、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿と定義します。頻尿の原因病態は様々であり、残尿や多尿、感染症、腫瘍、心因性などがあります。過活動膀胱や前立腺肥大症などの泌尿器科疾患の他、加齢による老化現象から、脳卒中やパーキンソン病などの脳脊髄疾患による神経因性疾患など様々です。まずはお気軽にご相談ください。
尿が残っている感じがある
(残尿感)
残尿感とは、排尿した後も、「尿を出し切っていない間隔」、「尿が残っている感じ」があるという症状です。実際に尿が残っていることもありますが、尿が残っていないのに残尿感を感じることもあります。残尿感以外の症状や検査所見から診断することとなりますが、原因となっている病気を見つけ出すことが非常に困難なことが多いのも事実です。また、稀に膀胱腫瘍など悪性疾患が存在することもありますので、まずはお気軽にご相談ください。
疑われる疾患
尿が出ない
(尿閉/腎不全)
尿が出ないという原因は、腎臓で尿が作られていない、もしくは尿は作られてはいるが、膀胱で溜まって、排尿しようとしても出てこないという状態です。また、膀胱に尿が十分溜まっていなくても、尿意を感じることがありその場合も十分な尿は出ません。原因としては、腎不全の他に、前立腺肥大症などによる尿閉、膀胱をコントロールする神経に障害があるなどによる神経因性膀胱、尿路感染症などが考えられます。
放置すると腎機能の低下から腎不全に至ったり、尿路感染症の場合は全身に菌が回り敗血症などの重篤な症状に進行することがありますので、まずはお気軽にご相談ください。
尿が漏れる
(尿失禁)
尿失禁(尿漏れ)には、腹圧性尿失禁や、切迫性尿失禁などいくつかの種類があります。
- くしゃみや咳をしたり、重いものを持ち上げたりした時に尿が漏れる
- 尿意が急に来てから、トイレまで我慢することができずに尿が漏れる
- トイレに行きたい状態が続いているがうまく排尿できず気づくと下着に尿が漏れている
- 出産後に尿を漏らすようになった、出産前のように排尿できなくなった
尿漏れは泌尿器科疾患だけでなく、出産や肥満、加齢などによることもあり適切な診断と治療が必要です。上記症状がございましたらお気軽にご相談ください。
※遺尿:無意識に尿排泄(尿の全量を排出):夜間遺尿は夜尿症ともいいます。
夜尿症
夜間の不随意な尿漏出が6歳になっても月に数回以上持続している場合をいいます。ほとんどの症例では年齢とともに消失していきますが、その中で下部尿路機能障害や睡眠覚醒の異常などが原因となることがあります。夜尿症の多くが、眠っている間に作られる尿の量が多すぎたり、膀胱のサイズが小さかったりすることが原因とされ、一般的には小学生になっても夜尿が続く場合に夜尿症の治療が行われます。医療機関で適切な師団や治療を受けることで2-3倍治る率が高くなるとされているのでお困りの方はご相談ください。
尿道から
膿が出る、陰部に
できものがある
(性感染症)
尿道口から膿が出るのは、尿道口から侵入した病原菌が尿道の粘膜に感染して尿道炎を起こしているのが原因です。尿道炎は主に性行為によって起こり、性感染症に含まれます。
性感染症は、初期の自覚症状がないことが多く、感染に気付かないことが多くあります。性行為があって2~7日の潜伏期間の後に尿道口から濃い膿が多量に出て、粘り気のある尿が出る、強い排尿痛を認めるなど場合は淋菌による尿道炎が疑われます。また、性行為があって1~3週の潜伏期間の後に尿道口から無色透明の薄い膿が少量出て、排尿痛が軽い場合は、淋菌以外の病原菌による尿道炎が疑われ、その約半数はクラミジアが原因です。尿道炎は、普通の腟性交の他、オーラルセックスでも起こることが少なくありません。その場合セックスパートナーの咽頭にこれらの病原菌が潜んでいると考えられます。
症状が無い期間であっても、パートナーにうつしてしまう可能性があり、女性の場合は、卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎・PID(骨盤内炎症性疾患)・不妊症・子宮外妊娠の原因に、男性の場合は、前立腺炎や精巣上体炎の原因になります。性感染症に関しては自然には治らないので、放置せず早期治療が大切ですのでお気軽にご相談ください。
その他の性感染症
排尿するときに
痛みがある
(排尿時痛)
排尿時に痛みを起こす最も一般的な病気は急性膀胱炎です。膀胱炎は、大腸菌などの細菌が尿道を通り、膀胱に侵入し炎症を起こします。特に問題となる基礎疾患がなくても起きる可能性がある病気です。特に男性より尿道が短い女性に発症することが多く、女性の2人に1人程がかかると言われています。そして、膀胱炎を繰り返す方の中には、潜在的な排尿障害などが潜んでいる場合があります。治療は抗生剤で数日以内に完治することがほとんどですが、放置すると高熱や倦怠感などの全身症状、背部痛などを伴う腎盂腎炎となり、重症化することがありますので、速やかな受診が必要です。お気軽にご相談ください。
その他考えられる疾患
排尿に異常がある
蓄尿および排尿は、下部尿路(膀胱、尿道)の働きによって行われ、下部尿路機能障害によってさまざまな症状が生じます。
排尿回数の異常
排尿時の異常
- 尿勢低下:尿の勢いが弱いこと
- 尿線途絶:尿線が排尿中に意図せず途切れること
- 腹圧排尿:排尿開始や尿線の維持のためにお腹を押すなど腹圧が必要になること
排尿時いきむこと - 終末尿滴下:排尿の収量が延長し、尿が滴下するほどに尿勢が低下すること
切れが悪いこと - 遷延性(せんえんせい)排尿:排尿開始までに時間がかかること
- 苒延性(ぜんえんせい)排尿:排尿開始から排尿終了までの時間がかかること
排尿後の異常
- 残尿感:尿が残っているように感じること(詳しくみる)
- 排尿後尿滴下:排尿直後に不随意にまた尿が滴下すること
尿を出し終わったあと、陰茎を下着にしまった後に尿道球部に残った尿が外尿道口より漏れて下着を濡らしてしまう現象です。尿道内に残った尿が出てくることが原因で、尿をしっかり振り切っても起こります。これらは、球部海綿体筋の収縮力が低下するためと考えられており、一般的には、病的なものではありませんが、尿漏れとして泌尿器科を受診される方が多く、40歳頃よりみられ50歳以上の方では3割が経験するとの報告もあります。また、このような症状の中に、前立腺肥大症や尿道狭窄などの疾患が隠れており、治療が必要な場合があるため上記症状がみられましたらお気軽にご相談ください。
その他の排尿・蓄尿症状
片側の背中や
腰の辺りが痛む
(腰背部痛)
腎臓は手を後ろに回してわき腹と背骨の中間あたりの場所にあります。普段は何も感じませんが、何らかの原因で痛みを生じることがあります。典型的なものが、尿管結石や腎臓に尿がたまる水腎症などの痛みです。また、尿管癌や腎臓癌、腎盂癌などによる悪性腫瘍、急性腎盂腎炎、腎梗塞、腎出血、腎のう胞でも痛みを伴うことがあり、腎臓の痛みといっても多くの病態が考えられるため早めの受診が必要です。お気軽にご相談ください。
夜間に尿で起きてしまう
(夜間頻尿)
夜間頻尿とは夜間、排尿のために1回以上起きなければならない症状をいいます。加齢とともに頻度が高くなり、日常⽣活においてストレスや睡眠不足など様々な支障が出ます。原因は、夜間多尿や膀胱容量の減少、睡眠障害などがあります。また、夜間頻尿は塩分摂取量や高血圧、睡眠時無呼吸症候群なども影響していることがあり、治療法はそれぞれ異なるため、夜間頻尿の原因がまず何かを診断することがとても重要となります。夜間頻尿は睡眠障害の主な原因のひとつであり、夜間頻尿がある人は死亡リスクが約1.3倍に増加することが示唆されています(Jori S. Pesonen氏らの系統的レビューおよびメタ解析The Journal of Urology誌オンライン版2019年7月31日号に掲載) 。夜間頻尿は、原因がさまざまであることから、適切な診断と治療が必要ですので、お気軽にご相談ください。
膣から何かが
下がってきた
(骨盤臓器脱)
骨盤臓器脱とは骨盤底筋と呼ばれる筋肉やその周辺にある靱帯が緩むことで、子宮・膀胱・直腸といった骨盤臓器の位置が徐々に下がり、腟から体の外へ出てきてしまうことをいいます。具体的には、膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、直腸瘤、膣断端脱などで、女性特有の疾患です。異物感、腰痛、重い感じ、引っ張られる感じ、排尿困難、排便困難、急に尿がしたくなり、我慢ができずに頻回にトイレに行ったり、間に合わずに漏れてしまったりなどが症状です。骨盤底筋訓練やペッサリーリング、手術などが骨盤臓器脱の治療です。骨盤臓器脱そのものが命に関わることはほとんどありませんが、臓器が体の外に出ることにより感染を引き起こしたり、下腹部の違和感などが生じ、生活に支障が出たりする可能性があり、症状が高度な場合は適切な医療機関へ御紹介いたしますのでお気軽にご相談ください。